パパの時間管理術には限界がある|往復3時間通勤でやったことと、やめたこと

はじめに

会社員だったころ、家から職場までドアツードアで1時間半かかっていました。往復で3時間です。

その通勤で、私はある時期から快速電車に乗るのをやめました。

普通列車に乗ると、当然その分遅くなります。それでも各駅停車を選んだ理由は、ひとつだけでした。

運が良ければ、乗り換えのときに座れるから。

時間管理術の記事としては、たぶん失格の判断です。速い手段があるのに、遅いほうを選んでいるわけですから。でも当時の私にとって、これは合理的な選択でした。

この記事では、7歳と5歳を育てている現役のパパとして、次の話をします。

  • なぜ育児中は「普通の時間管理術」が効かないのか
  • 会社員時代に私が実際にやっていたこと
  • 時間術ではどうにもならなかった3つの領域
  • そして、2024年11月に独立してから、実際に時間は増えたのか

結論から書いておきます。時間管理には限界があります。その限界がどこにあるのかを知っておくほうが、無限に効率化を追いかけるより役に立つと思っています。

 

なぜ育児中は「普通の時間術」が効かないのか

ポモドーロテクニック、タイムブロッキング、アイゼンハワーマトリクス。ビジネス書に載っている時間術は、どれも有効です。ただしひとつの前提が必要になります。

自分の時間を、自分で決められること。

育児中は、この前提が成り立ちません。

子どもの予定は、計画できません

保育園から「熱が出ました」と電話が来た瞬間、その日の計画は全部消えます。夜中に嘔吐されれば、翌日のパフォーマンスも消えます。

これは効率の問題ではなく、制御できない変数があるという構造の問題です。どんなに緻密に組んでも、崩れるときは崩れる。

年齢によって、難しさの種類が変わります

  • 乳児期:睡眠が不規則で、まとまった集中時間が取れない
  • 幼児期:目を離せない。物理的にそばにいる必要がある
  • 小学生:送迎と行事が増える。時間が「移動」で消える

「小学生になれば楽になる」とよく言われますが、実際には拘束のされ方が変わるだけです。手はかからなくなるかわりに、予定に縛られます。

データで見る、パパの1日

総務省の令和3年(2021年)社会生活基本調査によると、6歳未満の子どもがいる世帯の夫の家事関連時間は1日1時間54分。妻は7時間28分です。

この数字、2つの読み方ができます。

ひとつは「まだ4倍近い差がある」。これは事実です。

もうひとつは「確実に増えている」。2016年と比べると、夫は31分の増加。内訳は家事時間が13分、育児時間が16分の増加です。同じ期間に妻は6分減っています。

ネット上には「パパの家事育児は1日83分」という数字がまだ残っていますが、これは2016年のデータです。10年前の数字で現在を語ると、実態を見誤ります。

出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 結果の概要」

ちなみに同じ調査では、6歳未満の子を持つ夫の育児時間の内訳も出ています。「乳幼児の身体の世話と監督」28分、「乳幼児と遊ぶ」27分、「子供の送迎移動」6分。

1日に子どもと遊んでいるのは、平均27分です。この数字を見て「少ない」と思うか「そんなものか」と思うかは人によると思いますが、私は前者でした。

 

【会社員時代】私がやっていたこと、やらなかったこと

快速に乗らなかった理由

冒頭に書いた話に戻ります。

快速に乗れば、たしかに数分早く着きます。でも混んでいて、ほぼ確実に立ちっぱなし。一方、各駅停車にすると、乗り換えのタイミングで座れることがある。

座れた日と、立ちっぱなしだった日では、職場に着いたときの消耗がまるで違いました。そして夕方の残り方も違う。朝立ちっぱなしだった日は、帰宅後に子どもの相手をする気力が残っていません。

だから私は、速さではなく座れる確率を選びました。

いま振り返ると、これが私なりの時間術の本質だったと思います。

育児中のパパに必要なのは、時間を「速くする」ことではなく、自分の残量を「減らさない」ことです。

時間管理術の本を読むと、だいたい速くする方向の話が書いてあります。移動中に音声学習、隙間時間にメール処理、通勤時間を自己投資に。どれも正しいのですが、やればやるほど帰宅時の残量は減ります。

私は途中で、詰め込むのをやめました。

それでも、1日3時間は戻ってきませんでした

ただ、正直に書きます。この工夫は、根本的な解決ではありませんでした。

座れようが立とうが、往復3時間は消えます。年間の勤務日を240日とすると、1年でおよそ720時間。丸30日分です。

子どもが起きている時間に換算すると、もっと重い。朝は出る前に少し顔を見るだけ、帰れば寝る直前。平日に子どもと過ごせるのは、実質1時間あるかどうかでした。

この3時間を、時間管理でどうにかする方法を、私は見つけられませんでした。

 

それでも効いた、5つの実務テクニック

限界はあるとしても、やれることはあります。実際に効果があったものだけ挙げます。

① 前日の夜に、翌朝の分を全部終わらせる

服、持ち物、朝食の準備。朝にやることを1つ減らすと、朝の判断が1つ減ります。

これがいちばん効きました。朝のバタバタの正体は作業量ではなく、判断の量です。眠い頭で決めごとをするから消耗する。前日のうちに決めておけば、朝は動くだけで済みます。

この考え方は育児全般に使えます。疲れているときほど、判断を減らす。

② 「灰色の時間」を減らす

仕事をしながら子どもの相手をする時間。私はこれを勝手に「灰色の時間」と呼んでいました。

灰色の時間が多いほど、仕事も育児も質が落ちます。しかも本人は「両方やっている」感覚があるので、余計にたちが悪い。

30分の灰色より、10分の全力のほうが価値があります。子どもは、親が上の空かどうかを驚くほど正確に見抜きます。

③ 帰宅後の15分だけ、全力でやる

②の実践版です。帰ったら最初の15分は、スマホを別の部屋に置いて子どもと向き合う。

疲れているときに1時間は無理でも、15分ならなんとかなります。そして15分やると、その後の夕食や風呂の時間が、子どもの機嫌のぶん楽になりました。結果的に得をしています。

④ 送迎中は、何もしない

時間術の記事には「送迎中に音声学習を」と書いてありますが、私はやめました。

理由は2つあります。ひとつは安全のため。もうひとつは、送迎の移動中が、子どもが一番話す時間だからです。

正面から向き合っていないぶん、気楽に話し始める。家では「ふつう」しか返ってこないのに、歩いているときや車の中だと勝手にしゃべり出す。この時間を学習に使うのは、もったいないと思うようになりました。

習い事の送迎にどれだけ時間が取られるかについては、子どもの習い事は月いくら?でも書いています。送迎は「月謝以外のコスト」として、事前に計算しておいたほうがいい部分です。

⑤ 1日に30分の「何も入れない枠」を作る

子どもの体調不良は必ず起きます。予定を100%埋めていると、1回の発熱で全部が崩れる。

最初から30〜60分を空けておくと、崩れ方がずいぶん軽くなります。何もなければ、その時間は前倒しに使えばいい。

 

時間術ではどうにもならなかった3つの領域

ここが、この記事でいちばん書きたかった部分です。

上のテクニックは全部やりました。それでも削れなかったものが3つあります。

① 通勤時間

往復3時間。座り方は工夫できても、存在そのものは消せません。

これは効率の問題ではなく、住む場所と働く場所の距離という物理の問題です。引っ越すか、転職するか、働き方を変えるか。時間術の外側にしか解決策がありません。

② 突発対応の存在

バッファを作っても、「いつ来るかわからない」という緊張そのものは消えません。

会議中にスマホが鳴るたびに身構える。この待機コストは、時間の長さには表れないのに、確実に消耗します。

③ 職場の時間に関する文化

これがいちばん大きい。定時で帰りにくい空気、夕方から始まる会議、飲みの誘い。

個人の工夫では、組織の時間の流れは変えられません。「効率化すれば早く帰れる」は、早く帰っていい職場でだけ成立する話です。

この3つに共通しているのは、自分の工夫の外側にあるということです。ここに時間術をぶつけ続けると、消耗するだけで何も変わりません。

 

【独立して】実際に、時間は増えたのか

私は2024年11月に独立しました。理由はいくつかありますが、正直に言えば、通勤が嫌だったのが大きいです。

往復3時間が、どうしても無駄に思えて仕方がなかった。時間術でどうにかしようと工夫しましたが、結局どうにもなりませんでした。

結論:増えました

いちばん変わったのは、これです。

  • 子どもの送り迎えができるようになった
  • 習い事の送迎にも行けるようになった
  • 空いた時間があれば、そのまま遊べるようになった

特に3つ目が大きい。会社員時代は、子どもと遊ぶには「時間を作る」必要がありました。今は作らなくても、そこにいる。

この差は、時間の長さ以上に大きかったと思っています。

ただし、いいことばかりではありません

ここも正直に書きます。

仕事と生活の境目がなくなりました。家で働くので、いつでも仕事ができるということは、いつまでも仕事が終わらないということでもあります。会社員時代の「会社を出たら終わり」という区切りは、失いました。

そして収入の安定も失いました。会社員のときのように、毎月決まった額が入ってくるわけではありません。育休や給付金といった制度も、フリーランスは対象外です。

なので「独立すれば時間が自由になる」とは言えません。正確には、時間の使い方を自分で決められるようになった代わりに、別のものを差し出したという話です。

 

時間術の前に、「構造」を見直す

独立を勧めているわけではありません。リスクが大きすぎます。

私が言いたいのは、時間術で削れない領域にぶつかったら、そこは構造の問題だと考えたほうがいいということです。

そして構造を変える方法は、独立だけではありません。

制度を使うという選択肢

意外と知られていませんが、2025年10月から、3歳から小学校就学前の子どもを育てる人に対して「柔軟な働き方を実現するための措置」が会社の義務になりました。

会社は5つの選択肢(始業時刻の変更、テレワーク、保育施設、養育両立支援休暇、短時間勤務)のうち2つ以上を用意する義務があり、働く側はそこから選べます。

つまりテレワークや時差出勤を、制度として請求できる可能性があるということです。私が会社員だったころには、この制度はありませんでした。

詳しくは育児介護休業法でパパが使える制度にまとめています。使えるものがあるなら、独立より先にそちらを試すべきです。

ほかにも、こういう手があります

  • 職場の近くに引っ越す(通勤時間を物理的に削る)
  • 通勤時間の短い会社に転職する
  • 時短勤務・時差出勤を使う
  • 部署を異動する(夕方の会議が多い部署から離れる)

どれも「時間管理術」の本には載っていません。でも、往復3時間を30分にするほうが、朝の15分早起きより圧倒的に効きます。

 

よくある失敗

「完璧にやろう」としてしまう

仕事も育児も100点を目指すと、両方が崩れます。先に「どこは8割でいいか」を決めておくほうが、結果的にうまくいきます。

ツールの設定に時間を使ってしまう

タスク管理アプリを比較検討して、設定を作り込んで、結局使わなくなる。私も何度もやりました。

カレンダーとメモの2つで十分です。ツールを増やすほど、管理する対象が増えます。

「21日で習慣になる」を信じてしまう

これはよく見かける話ですが、習慣形成の研究から出てきた数字ではありません。元は1960年に美容外科医が書いた本の中の、患者が新しい顔に慣れるまでの期間についての記述です。

実際に測った研究では、まったく違う結果が出ています。ロンドン大学の研究チームが96人を12週間追跡した調査では、行動が自動化されるまでの期間は中央値66日、範囲は18日から254日。最も遅い人は、最も早い人の14倍かかっています。

研究者本人も後年、「66日」という数字が独り歩きすることに違和感を示していて、この研究が本当に示したのは「習慣化にかかる時間は人によって大きく違う」ということだと述べています。

つまり、3週間続かなかったからといって、自分を責める必要はありません。特に育児中は、そもそも毎日同じ条件が揃いません。

断れずに予定が埋まる

頼まれごとを断れないと、自分の優先事項が消えます。「絶対に確保する時間」を先にカレンダーに入れておくのが、いちばん現実的な防衛策です。

 

今日からできる3つ

大きく変えるのは無理でも、今日からできることを3つだけ。

  1. 1週間、時間の使い方を記録する
    30分刻みでメモするだけ。「何に時間が消えているか」が見えます。私は通勤の720時間に気づいて、独立を考え始めました
  2. 翌朝の準備を、前夜に全部終わらせる
    服、持ち物、朝食。朝の判断を減らすのが目的です
  3. 帰宅後の15分だけ、スマホを別の部屋に置く
    15分でいい。長さより、上の空でないことのほうが効きます

どれも1週間で効果が見えるものです。合わなければやめていい。

 

まとめ:削れないものは、構造を変えるしかない

  • 育児中は、自分で時間を決められないので、普通の時間術が効きにくい
  • パパの家事育児時間は1日1時間54分。5年で31分増えたが、妻とはまだ4倍近い差がある
  • 本当に必要なのは時間を速くすることより、自分の残量を減らさないこと
  • 効いたのは、前夜に準備/灰色の時間を減らす/帰宅後15分/送迎中は何もしない/バッファを先に作る
  • それでも通勤・突発対応・職場の文化は削れない。ここは構造の問題
  • 構造を変える方法は独立だけではない。2025年10月から使える制度がある
  • 「21日で習慣化」は根拠のない話。続かなくても自分を責めなくていい

最後に。

私は快速に乗るのをやめて、各駅停車で座席を狙っていました。時間管理術としては間違っているかもしれませんが、あれは「速さより、帰宅時の残量」を選んだ判断でした。

いま思えば、その延長線上に独立があったんだと思います。通勤時間を短くする工夫をやり尽くして、それでも3時間が消えなかったから、通勤そのものをなくした。

時間を効率よく使う方法は、本を読めばいくらでも出てきます。でも効率化でどうにもならない部分が、必ずある。そこにぶつかったときに「自分の努力が足りない」と思わないでほしい、というのがこの記事で一番伝えたいことです。

削れないものに気づいたら、それは工夫の問題ではなく、構造の問題です。

 

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