はじめに:育児休業給付金、実際いくらもらえるの?

「育休を取りたいけど、収入が減るのが心配…」 「育児休業給付金って、実際いくらもらえるの?」
育児休業を検討している方の多くが抱える、お金の不安。育児休業給付金は育休中の大切な収入源ですが、実際にいくらもらえるのか、計算方法がよくわからないという声も多く聞かれます。
さらに、2025年4月から新しい制度がスタートし、条件を満たせば手取りで実質100%の給付が受けられるようになりました。
この記事では、育児休業給付金の基本から計算方法、2025年の最新制度まで、どこよりもわかりやすく解説します。
この記事でわかること:
- 育児休業給付金の基本と受給条件
- 具体的な計算方法と金額シミュレーション
- 2025年4月からの新制度(出生後休業支援給付金)
- 申請方法と振込時期
- よくある質問と注意点
1. 育児休業給付金とは?基本をおさらい

育児休業給付金の概要
育児休業給付金とは、雇用保険から支給される給付金で、育児休業中の収入減少を補うための制度です。
制度の目的:
- 育児休業を取りやすくする
- 出産・育児による離職を防ぐ
- 仕事と育児の両立を支援
重要なポイント:
- 雇用保険から支給される(会社が払うわけではない)
- 非課税のため、所得税・住民税がかからない
- 社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除される
この3つのポイントにより、給付率67%でも実質的には手取りの約80%程度を受け取れることになります。
誰がもらえる?受給条件
育児休業給付金を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。
基本的な受給条件:
- 雇用保険に加入していること
- 正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も対象
- 雇用保険の被保険者期間が12か月以上
- 育休開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上
- または、賃金支払基礎時間数が80時間以上ある月が12か月以上
- 育児休業中に一定以上の賃金が支払われていないこと
- 休業開始前の賃金の80%以上が支払われていないこと
- 就業日数が一定以下であること
- 各支給単位期間(1か月)に10日以下の就業
- または、就業していても80時間以下
有期雇用労働者(契約社員など)の場合:
- 子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと
出典:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
2. 【基本編】育児休業給付金の計算方法

給付率は期間によって変わる
育児休業給付金の給付率は、育休開始からの期間によって異なります。
給付率:
- 育休開始〜180日目まで:67%
- 181日目以降:50%
計算式
育児休業給付金の計算式は以下の通りです。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
各項目の説明:
1. 休業開始時賃金日額
休業開始時賃金日額 = 育休開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日
- 育休開始前の直近6か月間に支払われた賃金が対象
- 含まれるもの:基本給、各種手当(残業代、交通費など)
- 含まれないもの:賞与(ボーナス)、臨時的な賃金
2. 支給日数
- 原則として30日
- 育休終了月は、実際の育休日数
3. 給付率
- 180日目まで:67%
- 181日目以降:50%
具体的な計算例
【例1】月給20万円の場合
前提条件:
- 育休前6か月間の平均月給:20万円
- 育休期間:6か月間
ステップ1:休業開始時賃金日額を計算
休業開始時賃金日額 = (20万円 × 6か月) ÷ 180日 = 6,667円
ステップ2:1か月あたりの給付額を計算
最初の6か月(180日間):
1か月目〜6か月目(180日間)
= 6,667円 × 30日 × 67% = 約134,000円/月
合計支給額(6か月間):
134,000円 × 6か月 = 約804,000円
手取り換算:
- 給付金は非課税、社会保険料免除
- 実質的には手取りの約80%相当
【例2】月給30万円の場合
前提条件:
- 育休前6か月間の平均月給:30万円
- 育休期間:1年間
ステップ1:休業開始時賃金日額を計算
休業開始時賃金日額 = (30万円 × 6か月) ÷ 180日 = 10,000円
ステップ2:1か月あたりの給付額を計算
最初の6か月(180日間):給付率67%
1か月目〜6か月目
= 10,000円 × 30日 × 67% = 約201,000円/月
7か月目以降:給付率50%
7か月目〜12か月目
= 10,000円 × 30日 × 50% = 約150,000円/月
合計支給額(1年間):
(201,000円 × 6か月) + (150,000円 × 6か月)
= 1,206,000円 + 900,000円
= 2,106,000円
【例3】月給40万円の場合(上限額の確認)
前提条件:
- 育休前6か月間の平均月給:40万円
- 育休期間:1年間
ステップ1:休業開始時賃金日額を計算
休業開始時賃金日額 = (40万円 × 6か月) ÷ 180日 = 13,333円
ただし、上限額があります!
- 2025年7月31日までの上限額:15,690円/日
- 2025年8月1日以降の上限額:16,110円/日
この例では13,333円なので上限内です。
ステップ2:1か月あたりの給付額を計算
最初の6か月(180日間):給付率67%
1か月目〜6か月目
= 13,333円 × 30日 × 67% = 約268,000円/月
7か月目以降:給付率50%
7か月目〜12か月目
= 13,333円 × 30日 × 50% = 約200,000円/月
上限額と下限額
育児休業給付金には、賃金日額の上限・下限が設定されています。
2025年7月31日まで:
- 上限額:15,690円/日
- 下限額:2,869円/日
2025年8月1日以降:
- 上限額:16,110円/日
- 下限額:調整予定(毎年8月1日に見直し)
30日換算の支給額(上限・下限):
| 給付率 | 上限額(2025/7/31まで) | 下限額(2025/7/31まで) |
|---|---|---|
| 67% | 約315,000円/月 | 約57,600円/月 |
| 50% | 約235,000円/月 | 約43,000円/月 |
出典:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
3. 【2025年最新】出生後休業支援給付金で手取り100%に!

新制度の概要
2025年4月から、「出生後休業支援給付金」という新しい制度がスタートしました。
これにより、条件を満たせば最大28日間、手取りで実質100%の給付が受けられます。
ポイント:
- 従来の育児休業給付金(67%)に13%が上乗せ
- 67% + 13% = 80%の給付率
- 社会保険料免除+非課税により、手取り実質100%
出生後休業支援給付金の受給条件
基本条件:
- 夫婦ともに14日以上の育休取得
- 子の出生後8週間以内に
- それぞれ14日以上の育児休業を取得
- 対象期間
- 産後休業をしている場合:産後休業終了後8週間以内
- 産後休業がない場合(父親・養子):出生日から8週間以内
- 育児休業給付金の受給資格を満たしていること
例外(夫婦取得要件が不要なケース):
- ひとり親の場合
- 配偶者が自営業の場合
- 配偶者が死亡している場合
- 配偶者が病気・けがで育児が困難な場合
給付額の計算方法
計算式:
出生後休業支援給付金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 13%
支給日数:
- 最大28日間
- 実際の育休取得日数が上限
上限額(2025年8月1日以降):
- 休業開始時賃金日額の上限:16,110円/日
- 28日間の上限額:約58,640円
具体的な計算例:新制度適用の場合
【例】月給25万円で夫婦ともに1か月育休取得
前提条件:
- 月給:25万円
- 夫婦ともに28日間の育休取得(出生後8週間以内)
ステップ1:休業開始時賃金日額
25万円 × 6か月 ÷ 180日 = 8,333円/日
ステップ2:従来の育児休業給付金
8,333円 × 28日 × 67% = 約156,400円
ステップ3:出生後休業支援給付金(新制度)
8,333円 × 28日 × 13% = 約30,300円
合計(28日間):
156,400円 + 30,300円 = 約186,700円
給付率:
- 80%(67% + 13%)
- 社会保険料免除+非課税で手取り実質100%
従来制度との比較:
- 従来:約156,400円(67%)
- 新制度:約186,700円(80%)
- 差額:約30,300円アップ!
出典:厚生労働省「出生後休業支援給付金について」
4. 育児休業給付金の支給期間

基本的な支給期間
原則:
- 子が1歳に達する日の前日(誕生日の前々日)まで
職場復帰した場合:
- 復帰日の前日まで
延長できるケース
以下の事由がある場合、最長2歳まで延長可能です。
延長事由:
- 保育所等に入所できない
- 保育所入所を申し込んでいるが入所できない
- 養育予定者が死亡、けが、病気など
- 子を養育予定だった配偶者が育児困難になった
- 離婚等により養育が困難
延長のタイミング:
- 1歳→1歳6か月
- 1歳6か月→2歳
注意:2025年4月からの変更点
保育所に入れないことによる延長の場合、申請ルールが厳格化されました:
- 1歳到達日の前日までに保育所の入所申込が必要
- 特別な事情がない限り、遡っての延長は認められない
出典:厚生労働省「育児休業給付の支給対象期間延長手続き」
出生時育児休業(産後パパ育休)
2022年10月から、新たに**「産後パパ育休」**が創設されています。
制度の概要:
- 子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)取得可能
- 通常の育児休業とは別に取得できる
- 2回に分割して取得可能
給付金:
- 「出生時育児休業給付金」が支給される
- 給付率は通常の育児休業給付金と同じ67%
- この28日間は、180日のカウントに含まれる
5. 支給までのスケジュールと振込時期

いつ振り込まれる?
支給申請のタイミング:
- 原則として2か月に1回申請
- 初回申請は育休開始日から4か月後の月末まで
振込までの流れ:
- 育休開始
- 2か月経過後に申請(会社経由)
- ハローワークで審査(約1週間)
- 支給決定通知書が届く
- 振込(決定から約1週間後)
目安:
- 育休開始から約2〜3か月後に初回振込
- 以降は2か月ごとに振込
なぜ振込が遅い?
「育休に入ったのに、給付金がなかなか振り込まれない…」という声は多いです。
理由:
- 2か月分をまとめて申請する仕組み
- 申請→審査→決定→振込の流れに時間がかかる
- 初回は手続きに時間がかかることが多い
対策:
- 育休開始から3か月程度は貯蓄で対応する計画を
- 会社に申請時期を事前確認
- 不安な場合は会社の担当者に進捗確認
6. 申請方法と必要書類

申請の流れ
育児休業給付金の申請は、基本的に会社を通じて行います。
ステップ1:会社への連絡
- 育児休業を取得する旨を伝える
- 開始日・終了予定日を報告
ステップ2:必要書類の準備
- 会社から指示された書類を用意
ステップ3:会社がハローワークへ申請
- 育児休業給付金支給申請書を提出
- 添付書類とともにハローワークへ
ステップ4:支給決定
- ハローワークで審査
- 支給決定通知書が届く
ステップ5:振込
- 本人名義の口座に振込
必要書類
基本的な必要書類:
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 会社が作成
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 会社が作成
- 賃金台帳、出勤簿など
- 賃金額と賃金支払日を証明する書類
- 母子健康手帳など
- 出産日や親子関係を確認できる書類のコピー
出生後休業支援給付金の追加書類:
- 配偶者の育休取得を証明する書類
- 配偶者の育休開始・終了日がわかる書類
- 配偶者の雇用保険被保険者番号
出典:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
7. 育休中に給与が出た場合はどうなる?

給与支給による減額・不支給
育休中に会社から給与が支払われると、給付金が減額または不支給になる可能性があります。
ルール:
ケース1:賃金が休業開始時賃金の13%以下 → 給付金は全額支給
ケース2:賃金が休業開始時賃金の13%超〜80%未満 → 給付金は減額支給
支給額 = 休業開始時賃金月額 × 80% − 支給された賃金額
ケース3:賃金が休業開始時賃金の80%以上 → 給付金は不支給
具体例
前提:
- 休業開始時賃金月額:30万円
- 給付率:67%(通常20.1万円支給)
パターン1:育休中の給与4万円(13%超)
支給額 = 30万円 × 80% − 4万円
= 24万円 − 4万円
= 20万円
→ 給付金20万円が支給される
パターン2:育休中の給与25万円(80%超) → 給付金は不支給
8. よくある質問Q&A

Q1: パートやアルバイトでももらえる?
A: はい、もらえます。
雇用保険に加入していて、受給条件を満たせば、正社員以外でも育児休業給付金を受給できます。
ポイント:
- 週20時間以上勤務している
- 雇用保険に加入している
- 過去2年間に12か月以上被保険者期間がある
Q2: 男性(パパ)ももらえる?
A: はい、もらえます。
育児休業給付金は男女問わず受給できます。
2025年の新制度で特にメリット:
- 夫婦で28日以上取得すれば出生後休業支援給付金も受給
- 手取り実質100%で28日間休める
Q3: 2人目、3人目でももらえる?
A: はい、もらえます。
何人目の子どもでも、受給条件を満たせば給付金を受け取れます。
注意点:
- 1人目の育休から復帰せずに2人目の産休に入った場合、受給条件を満たさない可能性がある
- 復帰後、再度雇用保険の被保険者期間が12か月必要
Q4: 育休中に退職した場合は?
A: 育休中に退職が決まると、その時点で支給停止。
育児休業給付金は「職場復帰を前提とした制度」のため、退職すると受給資格を失います。
タイミング:
- 退職日の前日までの分は支給される
- 退職後の分は支給されない
Q5: 上限額を超える高収入でも67%もらえる?
A: いいえ、上限額が適用されます。
休業開始時賃金日額の上限を超える場合、上限額で計算されます。
例(2025年7月31日まで):
- 月給50万円の場合
- 賃金日額:約16,667円
- しかし上限15,690円が適用
- 実際の支給額:約315,000円/月(67%の場合)
Q6: 社会保険料はどうなる?
A: 育休中は健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。
重要ポイント:
- 保険料を払わなくても、加入し続けている扱い
- 将来の年金額に影響しない
- 健康保険証も使える
この免除により、給付率67%でも手取りの約80%相当になります。
Q7: 税金はかかる?
A: 育児休業給付金は非課税です。
- 所得税:かからない
- 住民税:かからない
- 確定申告:不要
ただし、前年の所得に対する住民税は別途支払いが必要です。
Q8: 夫婦で同時に育休を取ったらどうなる?
A: それぞれが受給条件を満たせば、両方とも給付金を受け取れます。
2025年4月以降のメリット:
- 夫婦ともに14日以上取得で出生後休業支援給付金も受給
- 両方とも手取り実質100%(最大28日間)
9. 育児休業給付金を最大限活用するコツ

コツ1:2025年の新制度を活用する
夫婦ともに14日以上の育休を取得すれば、**最大28日間は手取り100%**の給付が受けられます。
おすすめプラン:
- パパが出生直後に28日間取得
- ママが産後休業明けから28日間取得
- 両方とも出生後休業支援給付金を受給
コツ2:延長が必要な場合は早めに準備
2025年4月から厳格化:
- 保育所入所の申込は1歳到達前日までに必須
- 遡っての延長は原則不可
対策:
- 早めに保育所の入所申込を
- 不承諾通知書を必ず保管
コツ3:育休中の収入を把握する
育休中に給与が出ると、給付金が減額される可能性があります。
確認すべきこと:
- 会社から育休中の給与支給があるか
- ある場合、どのくらいの金額か
- 給付金への影響はどうか
コツ4:振込時期を見越した資金計画
初回振込まで2〜3か月かかることを見越して:
- 3か月分の生活費を貯蓄
- クレジットカードの引き落とし日を調整
- 必要に応じて一時的な支援を検討
コツ5:会社との連携を密に
やっておくべきこと:
- 育休取得の意思は早めに伝える
- 必要書類を事前確認
- 申請時期を把握
- 不明点は会社の担当者に相談
10. まとめ:育児休業給付金を賢く活用しよう

押さえておきたい重要ポイント
1. 基本的な給付額
- 育休開始〜180日:休業前賃金の67%
- 181日目以降:休業前賃金の50%
- 社会保険料免除+非課税で手取り約80%相当
2. 2025年の新制度
- 夫婦で14日以上取得→出生後休業支援給付金
- 最大28日間は給付率80%(手取り実質100%)
3. 計算式
給付額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
4. 上限額・下限額あり
- 2025年8月1日以降の上限:16,110円/日
- 下限:2,869円/日(2025年7月31日まで)
5. 振込時期
- 初回は育休開始から2〜3か月後
- 以降は2か月ごと
6. 申請は会社経由
- 必要書類は会社が準備
- 本人は指示に従って書類を提出
計算シミュレーション早見表
| 月給 | 賃金日額 | 1か月の給付額(67%) | 1か月の給付額(50%) | 6か月の総額 |
|---|---|---|---|---|
| 15万円 | 5,000円 | 約100,000円 | 約75,000円 | 約600,000円 |
| 20万円 | 6,667円 | 約134,000円 | 約100,000円 | 約804,000円 |
| 25万円 | 8,333円 | 約167,000円 | 約125,000円 | 約1,002,000円 |
| 30万円 | 10,000円 | 約201,000円 | 約150,000円 | 約1,206,000円 |
| 35万円 | 11,667円 | 約234,000円 | 約175,000円 | 約1,404,000円 |
| 40万円 | 13,333円 | 約268,000円 | 約200,000円 | 約1,608,000円 |
※上限額以内の場合
最後に
育児休業給付金は、育児と仕事を両立するための大切な制度です。
特に2025年4月からの新制度により、夫婦で育休を取得すれば経済的な不安を大幅に軽減できるようになりました。
「収入が減るから育休は取れない…」と諦めていた方も、この記事の計算方法を参考に、ぜひ育休取得を検討してみてください。
制度を正しく理解し、賢く活用することで、家族との大切な時間を過ごしながら、経済的にも安心して育児に専念できます。
関連記事:
参考情報:
- 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
- 厚生労働省「出生後休業支援給付金について」
- 厚生労働省「改正雇用保険制度(育児休業給付)のポイント」